11.72024
長男と釣りに行くようになり、父親との昔のことを思い出した。父は全く釣りはしない人だった。弟と2人でそんな父に「いっぺん一緒に釣りに行こう」と誘ったことがある。珍しく快諾した父に首をかしげながら弟と準備を始めた。山間部の故郷では釣りといえばすぐそばの川である。砂浜に1㍍に満たない小さな竹の先を何本も立てて糸と針そしてミミズを付けて手投げで放り込むのである。リールなんてものはない時代だ。まったく釣りの分からない父に2人が手ほどきするのだ、力まかせに投げてしまい向こう岸まで糸を切って飛んでしまった。弟と大笑いである。釣果は上々で楽しかったのだが、後にも先にもそれ一度だけである。にもかかわらずその思い出は強烈に記憶している。数年前に弟に話したら同じように覚えていた。確か小学校高学年のころだったと思う。父親との思い出はどんな小さなことでも貴重なのだろう。父のあの頃から晩年まですべての思い出が一杯つまっている心の玉手箱をときどき開けてみるのである。涙!
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