
10.52025
すっかり秋の気配が漂う中、久し振りにサンマを食べた。去年もそうだったが「これがサンマ?」細くて小さくて腹の周りにはあの独特の脂身がない。味は確かにサンマなのだがもういい、スダチをかける楽しみもうせてしまうほどのショックだった。しかし今年のサンマは違う。昔おふくろがこれでもかと毎日焼いてくれたあのサンマである。しっかりとスダチをかけて大満足である。ほんの数週間前の体調では、全く食欲がなく、気持ちが悪く、人の話し声も、テレビの音もいやでたまらなかった。どうしても出なくてはならない電話、これが苦痛でどうしょうもなく、着信音を消しそして電源までも切ってしまうほどだった。あまりの辛さに人生の終(つい)を見据えた。おかゆだけを何とか流し込む毎日に辟易とし、ただ布団の中で横にしかなれない体でじっと天井を見る。しかしそう簡単には人は死ねないものだ。死ぬことも凄いエネルギーがいるものだと実感する。今はサンマが旨い、実に美味いと感じるのだから「生」への執着心は戻ってきたのだろう。あれはいったい何だったのかと思い返している。かなり楽になった。頭も少しづつ働くようになり、考えれるようもにもなってきた。もう大丈夫だろうと思えるようになったからあの時のことを素直に、正直に書こうと思う。
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